~AI時代のトラフィック増大に対応する「スケールアウトネットワーク」を構築、25年度中に商用運用開始を目指す~
KDDI株式会社
KDDIは2025年2月14日、柔軟な容量拡張が可能なクラスタ型ルーター(DDBR: Distributed Disaggregated Backbone Router、以下 本ルーター)の、バックボーンネットワーク適用に向けた技術検証(以下 本検証)を完了しました。
AI時代のトラフィック増大に対応するため、本ルーターで構成される「スケールアウトネットワーク」を、KDDIのサービスを支える主要4拠点の商用バックボーンネットワーク(注1)に2025年度中に導入、2027年度までに全国展開完了することを目指します。
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本ルーターは、従来のシャーシ型(一体型)ルーターと異なり、ハードウエアとソフトウエアが分離しているため、筐体のスロット数などの制約に影響を受けずに、必要な機器の増設を迅速に行うことができます。例えば、本ルーターではケーブルを接続するラインカード(注2)の追加を行うことで、トラフィック増大に対し柔軟にスケールアウト(機器増設による処理能力向上)が可能です。
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KDDIは2020年から本ルーターに関する取り組みを進めており、2023年6月には、インターネットゲートウェイピアリング用として商用導入を開始しています(注3)。
本検証では、ルーティング機能検証、パケット処理性能検証、相互接続検証などを実施し、固定・モバイルを含むKDDIの商用バックボーンネットワークで利用できる機能と性能を持っていることを確認しました。
本検証の成果は、2025年3月3日から3月6日までの間、スペインで開催される世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2025」において展示します。
■背景
- 近年、AI技術の普及と利用拡大に伴いネットワークの需要が急速に高まり、今後さらなるネットワークトラフィックの増大やニーズの多様化が想定されます。一方で、従来のハードウエアとソフトウエアが一体化したシャーシ型のルーターは、容量拡張する場合にシャーシ単位で増設を行う必要があり、更改タイミングがハードウエアに依存し長期化することから、トラフィックの増大に迅速に対応することが難しいという課題がありました。
- KDDIはTelecom Infra Project(以下 TIP)内のOpen Optical Packet Transport(OOPT)プロジェクトのサブグループであるDisaggregated Open Routersの議長として、バックボーンネットワークの通信制御を担う、ルーターのオープン化(ハードウエアとソフトウエアの分離)(
注4)に向けた技術開発を推進しています。さらに、2024年からは、Technical Committeeでアジア初のメンバーに就任し、モバイルや固定、AI、データセンターなどのTIPが対象とする技術全体を牽引しています。
- これまで、バックボーンネットワークにおけるルーターの仕様策定(
注5)や、TIP認定のベンダーの公表に貢献してきました(
注6)。2022年3月には本ルーターをインターネットゲートウェイピアリング用として商用導入することを想定した技術検証に世界で初めて成功し(
注7)、2023年6月にピアリング用としての商用運用を開始しています。
■本ルーターの特長
1. 柔軟な拡張性によりネットワーク全体の信頼性向上に寄与
本ルーターは、オープン化されたクラスタ型で構成されているため、トラフィック要件に応じてハードウエアを追加し、トラフィックの増大に柔軟に対応し、適切な容量のルーターを設計することが可能です。また、大規模なルーター1台の構成を小規模なルーター複数の構成に変更することにより、冗長性を高めることができ、ネットワーク全体の信頼性向上に寄与します。
2. 同一アーキテクチャーによる導入・運用コスト効率化と技術変化への迅速な対応
ピアリング・コア・エッジ(注8)などの領域に関わらず、同じアーキテクチャー・機器でネットワークを構築可能です。これにより、予備品や検証・運用ナレッジを共通化することができ、機器コストを低減し、かつ効率的なネットワーク運用に寄与します。また、特定のベンダーに依存せず、さまざまなベンダーのハードウエアとソフトウエアを自由に組み合わせることができるため、要件に応じた新機能追加にも迅速に対応できます。
KDDIは、今後もTIPでの取り組みを推進し、バックボーンだけでなくアクセスネットワークやデータセンターを含むネットワーク全体のオープン化や、多様なベンダーの参入による競争の促進、さらなる技術革新に貢献していきます。
- 注1)モバイル網、固定網など通信事業者が有する複数のネットワークを束ねる役割を果たすネットワーク。
- 注2)接続ポートやインタフェースを収容するモジュール。パケットの受信、処理、転送などを行い、クラスタ型ルーター(DDBR)においてはパケットフォワーダーが同様の役割を担います。
- 注3)
- 注4)装置のハードウエアとソフトウエアを分離し、両者を特定の組み合せだけではなく、多様な組み合わせ(異なるベンダーのハードウエアとソフトウエアを組み合わせることも含む)を可能にすることでアップグレードやイノベーションを促進する設計手法。この実現のため、機能やインタフェースの仕様を公開するアプローチが取られることが多く、ホワイトボックス化と密接な関係にあります。
- 注5)
- 注6)
- 注7)
- 注8)ピアリングは異なるネットワーク同士を相互接続してトラフィックを交換する領域、コアはネットワークの中核部分として高速かつ大容量の通信を処理する領域、エッジはエンドユーザーやデバイスが直接接続する領域を指します。
- ※この記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。
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ダウンロード
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