~放送事業者による海外番組映像伝送の作業時間やコストを削減~
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
KDDIとKDDI総合研究所は、異なる映像方式の国や地域からの録画番組ファイルを国内にて使用するために必須なフレームレート(注)変換処理を、クラウド上で高速に行うことが可能なソフトウエア(以下 本ソフトウエア)の開発に成功しました。本ソフトウエアでは映像品質を落とすことなく、HDTV(High Definition Television)映像ファイルのフレームレート変換処理を6.8倍高速化できることを確認しました。本ソフトウエアを活用することで、放送事業者などが海外番組映像を活用する際の作業時間やコストを削減できるため、より多くの番組をより迅速に提供することが可能となります。KDDIは2024年度中に、本ソフトウエアを搭載したクラウド映像伝送サービスの提供を目指します。
なお、本ソフトウエアの開発成果については、2023年8月30日から2023年9月1日に開催される「映像情報メディア学会2023年年次大会」にて講演を行う予定です。
<国際映像伝送の構成例>
■背景
- 異なる映像方式の国や地域から入手した番組映像や録画番組ファイルを使用する場合、国内の映像方式に適合させるためにフレームレート変換処理が必須となります。例えば、日本や米国では1秒間の動画が約60枚の画像、欧州などでは1秒間に50枚の画像で構成される映像方式が使用されています。このため、欧州の番組映像を日本に伝送し使用するためには、画質を損なうことなく滑らかな動きを保てるような画像フレームを挿入する処理が必要となります。
- 近年、インターネット配信などの普及に伴い、放送事業者が取り扱う海外番組の量も増加し、国際映像伝送においてもより多くの番組映像をより迅速に伝送したいという要求が高まっています。そのため、従来の専用線による高品質な生中継の映像伝送に加え、録画済みの番組をファイルとしてインターネットやクラウドサービスを利用して伝送するというケースも増えてきています。
- KDDIは1963年の衛星回線による初の日米間テレビ中継から、60年に渡り専用線を使用した国際映像伝送サービスを提供しています。現状、KDDIが提供するサービスでは、フレームレート変換処理は番組の長さに相当する時間(以下 実時間)をかけて専用装置(以下 フレームレート変換装置)を使用して行う必要があります。録画済みの番組のファイルの伝送においてもフレームレート変換装置で変換する方法を取っているため、フレームレート変換装置数の制限により伝送可能な番組数が制限される課題や、伝送処理に実時間がかかってしまうという課題がありました。
<フレームレート変換処理のイメージ>
■本ソフトウエアの概要
本ソフトウエアは、番組映像の画面を小サイズのブロックに分け、そのブロックごとにGPU(Graphics Processing Unit)の一つひとつの演算ユニットを割り当てることで、数十ブロックを並列でフレームレート変換処理します。これにより、映像品質を落とすことなく高速なフレームレート変換処理を実現しています。また、AWS(Amazon Web Services)などのクラウド上にも実装できるため、フレームレート変換処理のためのリソースを柔軟に追加できるようになります。AWS g4dn 12xlargeインスタンス上の実装では、例えば10分の長さの欧州方式のHDTV映像の録画番組ファイルを約1.5分(6.8倍の速さ)で日本方式のHDTV映像ファイルに変換できます。
本ソフトウエアを国際映像伝送サービスに活用することで、番組映像の変換処理に関わる装置数や処理時間に関する制限が大幅に緩和されます。放送事業者などの海外番組映像の活用に関わる作業時間やコストが削減され、より多くの番組を迅速に提供することが可能となります。
KDDIとKDDI総合研究所は、今後も国際映像伝送サービスの高度化に努め、放送業界のDXへの貢献を目指します。
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