~高品質な3D映像を1,440倍の速度で処理可能、新しい映像視聴体験が可能に~
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
KDDIとKDDI総合研究所は2025年2月5日、三次元(以下 3D)メッシュ映像(注1)の、高効率な圧縮技術に関する国際標準規格であるV-DMC(
注2)の暫定仕様に対応した、リアルタイム圧縮技術(以下 本技術)を世界で初めて(
注3)開発しました。また、本技術を搭載したリアルタイムソフトウエアエンコーダー(以下 本エンコーダー)を用いて、ボリュメトリックスタジオ(
注4)で撮影した3Dメッシュ映像を圧縮し、受信拠点に伝送・再生する実験(以下 本実験)に成功しました。
3Dメッシュ映像の伝送には膨大なデータの圧縮が必要です。本技術では処理負荷軽減のため、圧縮処理の並列化と、圧縮処理自体の簡素化を取り入れました。その結果、映像品質を維持した状態で、従来のソフトウエアエンコーダー(以下 従来のエンコーダー)(注5)と比較して、圧縮処理速度を1,440倍に向上させることに成功しました。
KDDIとKDDI総合研究所は2023年10月、V-DMCに対応したリアルタイム再生技術を開発しました(注6)。本技術とV-DMCのリアルタイム再生技術を組み合わせることで、スポーツや音楽ライブなどの3Dコンテンツを、人物などの動きを忠実に再現した高品質な状態で、リアルタイムに配信することが可能になりました。
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■背景
近年、VRやAR市場などの成長に伴い3Dコンテンツの映像伝送の需要は高まっています。3Dコンテンツの実現には膨大な量のデータが必要であり、両社はこれまで、さまざま3Dデータ形式において、映像品質を維持したまま圧縮する技術や高速で再生できる技術などの開発を進め、視聴体験の向上を目指してきました。
3Dメッシュ映像は人物などの動きを自然かつ忠実に再現することができ、ゲームなどのエンターテインメント領域でも多く活用されているデータ形式です。両社は3Dメッシュ映像に注目し、リアルタイム再生技術を開発するなど、早期実用化に向けた取り組みを進めてきました。一方で、従来の圧縮技術では、映像品質の劣化や圧縮処理負荷の大きさなどの影響が大きく、リアルタイム伝送のボトルネックとなっていました。
■本実験の概要
両社は圧縮処理の並列化と圧縮処理自体の簡素化を取り入れ、V-DMCに対応した本エンコーダーを開発し、3Dメッシュ映像をリアルタイムで圧縮・伝送・再生する実験を行いました。
- 実施日
2025年2月5日 - 実施内容
ボリュメトリックスタジオで撮影した3Dメッシュ映像を本エンコーダー搭載のPCで圧縮後、固定回線を使って送信拠点から伝送し、モバイル回線で受信した3Dメッシュ映像をスマートフォンでリアルタイム再生しました。
<従来技術との画質の比較(動画)>
なお、本技術の開発と本実験は、総務省SCOPE(国際標準獲得型)JPJ000595の委託を受けて実施した研究開発の成果です。
KDDIは、KDDI VISION 2030「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げています。両社は今後もスポーツやエンターテインメント領域での新たな映像視聴体験の提供に向けて取り組んでいきます。
本技術の詳細は別紙をご参照ください。
<別紙>
■本技術の詳細
本エンコーダーは、圧縮処理の並列化と圧縮処理自体の簡素化を取り入れました。これにより、映像品質を維持したまま、従来のエンコーダーと比較して圧縮処理速度を1,440倍向上させることに成功しました。(注7)
1. 圧縮処理の並列化
V-DMCでは、3Dメッシュ映像データを、幾何情報を構成する基本メッシュ情報、差分情報、テクスチャ情報を構成する色情報(二次元画像)の3つの情報に分割し、それぞれ異なる技術で圧縮します。本エンコーダーでは、分割処理と圧縮処理について、それぞれの特性に応じてCPUとGPUを使い分けることで、処理量を平準化しました。
これにより、CPUとGPUの性能を最大限に活用することができ、従来のエンコーダーに対して圧縮処理速度を240倍向上させました。
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2. 圧縮処理自体の簡素化
通常、圧縮処理自体を簡素化して処理速度を向上させると圧縮効率が低下し、同一のデータ量における映像品質が劣化します。今回は20種類の処理簡素化技術を導入することで、映像品質を維持したまま、従来のエンコーダーに対して圧縮処理速度を6倍向上させました。
処理簡素化技術のひとつとして、3Dメッシュ映像のデータを構成する色情報(二次元画像)において、圧縮処理前の二次元画像を生成する際に、二次元画像内を構成するテクスチャ領域と、非テクスチャ領域の境界に生じる色の変化を小さくすることで、効率的に二次元画像を圧縮する仕組みを導入しました。
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- 注1)3D物体を表現するデータ形式で、フレーム毎に頂点の位置と頂点同士の接続関係から構成される面の集合によって形状を示す幾何情報と物体表面の色や模様を示すテクスチャ情報を持ちます。
- 注2)V-DMC(Video-based Dynamic Mesh Coding)は、国際標準化機関のISO/IECのMPEGにて、2025年度中に標準化予定です。本技術は、2024年度に規格化された暫定仕様に対応して開発しています。
- 注3)3Dメッシュ映像圧縮技術の国際標準規格V-DMCの暫定仕様に対応したリアルタイムソフトウエアエンコーダーの開発が世界初。2025年2月5日 KDDI総合研究所調べ。
- 注4)被写体を取り囲むように多数のカメラを設置して、さまざまな角度から撮影した映像データをもとに動的な3Dメッシュ映像のデータ(骨格情報などは含まず、人物などの動きが反映された形状情報の時系列データにより動きの表現が可能)のコンテンツを制作する撮影スタジオのことです。
- 注5)MPEGが開発したV-DMC暫定仕様に対応したオフラインソフトウエアエンコーダーのこと。ファイルなどで一括入力された時系列データに対して圧縮処理を行うことができますが、逐次的に入力される3Dメッシュ映像の時系列データに対して圧縮処理を行うことはサポートされていません。
- 注6)
- 注7)従来のエンコーダーのリアルタイム化には、例えば圧縮対象が10万ポリゴンの3Dメッシュ映像の場合、圧縮処理速度を1,000倍以上向上させる必要がありました。本エンコーダーでの1,000倍を超える高速化は、ポリゴン数の多い、より緻密な3Dメッシュ映像もリアルタイムに圧縮できることを意味します。
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