ニュースリリース

水中音響測位技術で水中の複数対象物の位置測位に成功

~海中点検やダイビングを行う人の安心安全な水中活動に貢献~

KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所

KDDIとKDDI総合研究所は2023年8月、水中での複数の作業者やダイバーの位置特定が可能な水中音響測位装置を開発し、静岡県沼津市沿岸で実証実験を行いました。水中音響測位装置により海中に潜行する2名のダイバーと1台の水中ドローンを含む計10台の対象(超音波発信器)の位置を1台の受信器で毎秒測定し、それぞれの位置を可視化して観測することに成功しました。なお、今回の実証実験では、対象物から発する超音波の位相(該当項目へジャンプします注1)差や到達時間から対象物の位置を求めることが可能な技術「SSBL(Super Short Base Line)音響測位技術」を用いました。
これにより、ダイバーや水中ドローンの位置と動き(位置の時間推移)が陸上でも把握できます。それぞれの位置情報や動きをダイバーへフィードバックすることで、水中活動の安全性、効率を向上させることが期待されます。両社は、水産資源の監視や水中インフラ点検、さらにはレジャーダイビングなど、海洋を含む水域での活動に対するDXを推進していきます。

実証実験イメージ図

<実証実験イメージ図>

■背景

KDDIグループは、中期経営戦略の事業戦略を「サテライトグロース戦略」と位置づけ、事業の核となる通信事業の進化と、その他の注力領域の拡大を目指しています。注力領域の1つであるDXでは、さまざまな業界やシーンにおける生産性向上、業務効率化を推進しています。その一環として、海洋など水域でのDXにも取り組んでおり、青色LED光無線通信の実用化に向けた実証実験や、水空合体ドローンの開発などの研究開発や技術検証を進めてきました。特に水中での音響通信、音響測位に関しては、1990年代から研究を開始し、海底ケーブルの探査やガンジスカワイルカの観測の実績があります。
近年、国内の港湾事業や漁業での海中点検の必要性が増加しています。一方で、こうした水中活動には事故のリスクが伴います。両社は水中活動の不安を払拭し、事故が起きた際の捜索や救助のため、また、複数の水中作業者や水中ドローンがより効率的に作業するため、水中活動時の位置把握、安全確保が重要な課題と認識し、その対策を検討してきました。

■今回の成果

このたび両社は、1台の受信器で1秒間に複数の対象(超音波発信器)の位置を観測可能な水中音響測位装置を開発しました。実証実験では10台の超音波発信器を水深2~30メートルの各位置に沈め、超音波発信器の発信タイミングを0.1秒ずつずらし、受信器側も同じタイミングで受信することで、10台の位置を毎秒計算し観測することを可能としました。また、10台のうち3台の超音波発信器を2名のダイバーと1台の水中ドローンに装着し、潜行するダイバーと水中ドローンの位置を毎秒可視化することに成功しました。
さらに、音波を使った測定は一般に海面などの反射が大きく影響しますが、これまで培った水中音響測位技術の知識や技術の蓄積により、今回の実装方式ではこの問題を大幅に軽減し、実海域で動作することを確認しました。

水中音響測位装置

<水中音響測位装置>

実証実験の様子

<実証実験の様子>

■今後の展望

今後は、位置測定性能の向上、測定対象数の拡大、測定範囲の延伸などの開発を行い、水産資源の監視や水中インフラ点検をより安全に、効率的に行えるようにDX化を支援します。港湾事業や漁業に加え、スキューバダイビングなどのレジャーへの活用も検討し、さまざまなシーンでの社会課題の解決を目指します。

(参考)

■海中での実証実験の概要

  • 実施期間
    :2023年8月19日から2023年8月20日
  • 場所
    :静岡県沼津市沿岸 最大水深34メートルの海上に錨で固定された台船(該当項目へジャンプします注2)上
  • 使用機器台数
    :超音波受信器1台、超音波発信器10台
  • 測定範囲
    :面積 約400平方メートル、深度 34メートル
  • 実証内容
    • 水深2~30メートルに沈めた超音波発信器10台からの超音波を、水深1メートルの位置に固定した超音波受信機1台で受信。各超音波発信器の発信のタイミングを0.1秒ずつずらし、超音波受信機に接続したPCで超音波発信器の各位置を1秒ごとに更新して同時に表示できるか確認。
    • 超音波発信器10台のうち、3台を2名のダイバーと1台の水中ドローンに装着し、海底までの位置を測定できるか確認。

2019年10月2日 KDDI総合研究所ニュースリリース
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  • 注1)
    周期変化する波(ここでは超音波)における時間的位置(タイミング)のこと。2つの波の時間的なずれを位相差と言う。
  • 注2)
    試験設備を有した長方形の作業船。
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