ニュースリリース

企業活動の社会的インパクトを金額換算する「インパクト加重会計」を実施

~IoTビジネスを通じて年間5,023億円の価値を創出~

KDDI株式会社

KDDIは、企業が行う活動が社会や環境に及ぼす影響を金額換算して定量的に示すことで企業価値の理解促進を図るため、KDDIが提供するIoTビジネスについてインパクト加重会計(以下 本取り組み)を実施しました。本取り組みは、早稲田大学 柳 良平客員教授の監修のもと、アビームコンサルティング株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:山田 貴博、以下 アビームコンサルティング)とともに、IFVI(該当項目へジャンプします注1)が提唱する「インパクト加重会計」のフレームワークに即して実施しています。
本取り組みの結果、交通事故時の緊急通報による被害軽減をはじめとしたIoTビジネスの提供を通じて創出した社会的インパクトは5,023億円(2024年3月期)と算出され、EBITDA(該当項目へジャンプします注2)の約1.6倍に相当することが確認できました。
KDDIは今後、本取り組みについてサステナビリティ統合レポートなどで開示するとともに、さまざまな事業活動が社会に及ぼす影響の定量分析や可視化の取り組みを拡大・推進していきます。

インパクト加重会計(2024年3月期)(百万円)(該当項目へジャンプします注3
[A] 売上収益1,264,739
[B] EBITDA309,368
[C] IoT回線の社会的インパクト502,266
インパクト加重会計の総利益(= [B] + [C])811,634
売上収益に対するインパクトの比率(= [C] / [A])39.7%
EBITDAに対するインパクトの比率(= [C] / [B])162.4%

■背景

  • 世界的に、環境問題や社会課題に対する取り組みが各企業に求められている一方、これらの取り組みは経済活動と切り離して考えられ、企業価値の向上につながりにくいことが課題でした。そのため、自社の社会への貢献を金銭的価値に換算して示し、さまざまなステークホルダーに開示する動きが進んでいます。
  • インパクト加重会計(Impact-Weighted Accounts)は、アメリカのハーバードビジネススクールのセラフィム教授らが提唱している新しい会計手法です。サステナビリティなどの取り組みで発生する環境や社会へのプラスとマイナス両方の影響(インパクト)を測定し、金額換算を行います。
  • KDDIにおいても、自社の事業活動が社会全体に及ぼす影響を把握・分析する必要があると考え、このたびインパクト加重会計を実施しました。

■IoTビジネスの社会的インパクト内訳について

KDDIは、20年以上にわたってIoTビジネスを展開してきました。IoT回線数は4,197万回線(2024年3月末時点)になり、自動車やセキュリティー、電気・ガスなどの業種へ提供されています。このようなIoTビジネスの提供が社会に対しどのようなインパクトをもたらしているのか、インパクト加重会計を用いて定量的に可視化しました。

例えば自動車業界では、KDDIは自動車に搭載された通信機を通じて、クラウドやサーバーにデータを蓄積するための高品質で安定した通信を提供する通信基盤「グローバル通信プラットフォーム」を提供しています。このプラットフォームにより、交通事故の際に緊急通報が可能となるなど、IoT回線を提供することでさまざま価値を創出しています。

IoT回線の社会的インパクト内訳(2024年3月期)(百万円)
提供先社会的インパクト算出に用いた提供価値(該当項目へジャンプします注4
自動車417,337事故時の緊急通報による被害軽減効果
最適なルート表示による車両のCO2排出量削減効果
セキュリティー56,591ホームセキュリティー利用による火災起因の死亡回避効果
ホームセキュリティー利用による不法侵入回避効果
GPS位置情報端末使用による労働時間創出効果
電気・ガス20,969検針自動化による生産性向上効果
検針自動化による移動用車両からのCO2排出量削減効果
使用量の可視化によるCO2排出量削減効果
その他7,369上記以外のIoT回線の安定的な提供による生産性向上の価値
合計502,266

■早稲田大学 柳 良平客員教授のコメント

ESGを企業価値につなげる「柳モデル」の考案者であり、日本第1号のインパクト加重会計を実践した早稲田大学 柳客員教授は下記の通り述べています。
「今回の算定は、ロジックや算出された金額ともに、非常に挑戦的な試みかつ高品質な素晴らしい結果である。一企業として算出をするには難しい事業・製品だったと思うが、適切にロジックが固まっており示唆に富む。また、算出された金額感や財務数値の切り方についても違和感なく、価値提供先ごとに金額が分けられているのも非常に良い。企業が社会や環境にもたらす社会的インパクトを可視化した先進的事例であるため、積極的な活用・開示を期待したい。」

KDDIグループは、KDDI VISION 2030において「『つなぐチカラ』を進化させ、誰もが思いを実現できる社会をつくる。」を掲げ、これからもパートナーの皆さまとともに社会の持続的成長と企業価値の向上を目指すサステナビリティ経営を推進していきます。

(参考)

■これまでのKDDIの非財務活動の可視化について

KDDIは、「企業活動と企業価値」の関係性を分析し、可視化する活動を推進しています。
2021年4月には、アビームコンサルティングが提供する柳モデルを活用した「Digital ESG Data Analytics」を活用し、ESG開示の拡充を主眼とした、非財務データとPBR(株価純資産倍率)の相関分析を実施(該当項目へジャンプします注5)しました。
また2022年9月には、さらに深掘りする分析として、アクセンチュア株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:江川 昌史、以下 アクセンチュア)の「AI Powered Enterprise Value Cockpit」のモデルを活用し、KDDIとアクセンチュアの合弁会社である株式会社ARISE analyticsと共同で、因果関係も含めた定量的な分析を行いました(該当項目へジャンプします注6)。

  1. 注1)国際インパクト評価財団。ハーバードビジネススクールのインパクト加重会計イニシアティブ(IWAI)から2022年に発展。
  2. 注2)営業利益・減価償却費および償却費・固定資産除却費・減損損失を合計した値のこと。
  3. 注3)財務数値は同時期のビジネスセグメントの数値を使用しています。
  4. 注4)例として、自動車の「事故時の緊急通報による被害軽減効果」の考え方を記載。対象は常時ネット接続が可能な自動車(コネクティッドカー)を指し、事故発生時に緊急通報が可能なシステムなどがここに含まれます。
    米国運輸省や内閣府などのマクロデータから概算した交通死亡事故の発生率に対して、緊急通報により救命措置が早まった場合における生存率と、その被害者の労働価値を乗じ、そこに当社が提供しているIoT回線数を乗じることで、交通死亡事故回避による効果を算出しています。
  5. 注5)統合レポート2021
    非財務情報と企業価値の相関を探る(11.7MB)
  6. 注6)サステナビリティ統合レポート2023
    非財務活動の可視化による活動改善(15.2MB)
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