ニュースリリース

KDDI、KDDI総合研究所、Jij、QunaSys、早稲田大学、AI・量子共通基盤の構築に向けパートナーシップ締結

~量子コンピューターのユースケース拡大と事業化に向けた取り組みを開始~

KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
株式会社Jij
株式会社QunaSys
学校法人早稲田大学

KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)、株式会社KDDI総合研究所(本社:埼玉県ふじみ野市、代表取締役所長:中村 元、以下 KDDI総合研究所)、株式会社Jij(本社:東京都港区、代表取締役CEO:山城 悠、以下 Jij)、株式会社QunaSys(本社:東京都文京区、代表取締役:楊 天任、以下 QunaSys)、学校法人早稲田大学(本部:東京都新宿区、理事長:田中 愛治、責任者:戸川 望 教授、以下 早稲田大学)の5者は2025年2月27日に、量子コンピューターの技術開発と事業化に関するパートナーシップ締結に合意しました。
今後5者は、量子計算の組み合わせにより普及が進むAIの性能を大きく向上させるため、AIと量子計算をシームレスにつなぐAI・量子共通ビジネスプラットフォームを開発するとともに、このプラットフォームを活用したユースケースを拡大させ、量子コンピューターの事業化に向けた具体的な取り組み(以下 本取り組み)を進めていきます。

各者ロゴ:KDDI株式会社 株式会社KDDI総合研究所 株式会社Jij 株式会社QunaSys 学校法人早稲田大学
各者ロゴ:KDDI株式会社 株式会社KDDI総合研究所 株式会社Jij 株式会社QunaSys 学校法人早稲田大学

■量子コンピューターへの期待と課題

  • 大規模言語モデル(LLM)などの生成AIの利用が急速に広がるなか、従来のコンピューター(古典コンピューター)の計算能力や処理速度には限界があることが明らかになっています。近年、これらの課題を解決するため、AIの進化を促進する可能性がある新しい計算機として、量子コンピューターが注目されています。
  • 量子コンピューターは、量子の特性を活用して、複数の計算を同時に行える特異な計算能力があり、古典コンピューターでは解決が難しい組み合わせ最適化問題などの複雑な計算を処理することができます。さらに、AIと量子コンピューターを組み合わせることによって、より複雑なデータセットの分析や、新しいアルゴリズムの開発が可能となり、AIの性能を大きく向上することが期待されています。
  • 一方、実用的なユースケースの開拓が、業界全体にとって大きな障壁となっています。内閣府の「量子未来社会ビジョン」(該当項目へジャンプします注1)においても、利用者が量子技術を活用してユースケースを探索・創出する取り組みの重要性が指摘されています。
  • 量子コンピューターの研究開発は、主にビッグテック企業やスタートアップが行っていますが、大規模な量子ビットや量子チップ(該当項目へジャンプします注2)の実現方法が確立されていません。また、さまざまな技術開発のアプローチがあるなか、将来の主流技術を予測することが難しくなっており、将来的に量子コンピューターの活用を検討している企業や組織にとって課題となっています。

■5者でのパートナーシップについて

1. これまでの取り組み

  • KDDIとKDDI総合研究所は、通信分野を中心に、早くから量子技術のユースケースの探索や創出に取り組んできました。具体的には、基地局の設定を最適化することで通信品質を向上させる取り組み(該当項目へジャンプします注3)や、auのコンタクトセンターのシフト勤務作成を自動化する実証(該当項目へジャンプします注4)などを通じて、量子技術に関する知見を獲得してきました。
  • KDDI総合研究所、Jij、QunaSys、早稲田大学は「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期 先進的量子技術基盤の社会課題への応用推進」(以下 SIP3量子)(該当項目へジャンプします注5)に参画し、他企業・他大学との連携を通じ、量子技術のユースケース探索と創出や、量子コンピューターのベンチマーク(評価用)ソフトウエアの開発、テストベッド利用環境整備に継続的に取り組んでいます。

2. 本取り組みについて

  • 本取り組みでは、通信分野で量子コンピューターのユースケースの探索や創出に取り組んできたKDDI、KDDI総合研究所の知見と、業界の研究開発をリードし、量子計算で早期に実用化が期待される最適化や化学計算の分野で強みを持つJij、QunaSys、早稲田大学の知見と要素技術を統合していきます。
  • 国立研究開発法人産業技術総合研究所の量子・AI融合技術ビジネス開発グローバル研究センター(G-QuAT)が構築を進めている量子・古典ハイブリッドのテストベット環境と連携していく予定です。
  • また、国内に限らず海外への展開も視野に入れています。SIP3量子は現在、欧州との連携が進んでおり、そのコネクションを通じて欧州の量子関連企業への参画を呼びかけていきます。
  • 今後、以下の取り組みを進め、量子コンピューターのユースケースの拡大と、AIと量子コンピューターの融合を加速させ、量子コンピューターの能力を生かした新しい社会の実現に貢献していきます。
(1)ユースケースの開拓
  • 量子コンピューターを活用できる産業分野を特定するため、早期に実用化が期待できる最適化や化学計算の分野を中心にユースケースを開拓していきます。
  • 最適化の分野では、KDDIのコア事業である通信に関連して、通信品質や基地局のエネルギー管理の最適化などを想定しています。また通信以外の分野では、物流の経路や製造業における生産計画の最適化などを想定しています。
  • 化学計算の分野では、次世代の再生可能エネルギーに向けた材料開発などを想定しています。
(2)AI・量子共通ビジネスプラットフォームの開発

量子コンピューターを社会に実装していくためには、古典コンピューター上で社会的な実装が進むAI基盤から、量子コンピューターに利用者をシームレスにつなげ、古典・量子コンピューター間の境目を感じさせない環境の構築が必要です。今後、次のような機能を提供するAI・量子共通ビジネスプラットフォームの構築を目指し、開発を加速させていきます。

<提供する機能(想定)>

  • 量子コンピューター上のアプリケーションの開発者と利用者を分け、古典コンピューターのAPIのような仕組みや、利用者向けのアプリケーションポータルを用意することで、量子計算に詳しくない利用者でも容易に量子コンピューターの計算能力を活用できる機能。
  • AI基盤と量子計算基盤は年々進化すると考えらえるため、その進化によって生じる技術的な変化や差分をプラットフォーム側で吸収し、アプリケーションごとに最適な計算資源を選択できる機能。
<今後の取り組みの概要>

3. 各者の役割

担当役割
KDDI
  • AI・量子共通ビジネスプラットフォームの構築
  • GPU基盤の提供
  • 産業課題ユースケースの提供
KDDI総合研究所
  • AI・量子共通ビジネスプラットフォームの要素技術提供
  • SIP3量子を通じたハードウエア企業との連携
Jij
  • 国内外における最適化領域のユースケース開拓や知見の提供
  • 最適化アルゴリズムの開発
  • 量子コンピューター向けソフトウエア統合開発環境の提供
QunaSys
  • 化学計算領域のユースケースや知見の提供
  • 化学計算アルゴリズム・パッケージの提供
  • 量子アルゴリズムの計算資源消費量に関する知見の提供
早稲田大学
  • 量子最適化計算の効率化・高精度化アルゴリズムの知見の提供
  • 量子計算技術の前処理・後処理法の知見の提供

(参考)

■Jijについて

Jij(ジェイアイジェイ)は、「社会を計算可能にし、人類の進歩に貢献する」をミッションに掲げ、大規模な計算を伴う最適化計算事業を実施するスタートアップです。量子・最適化技術を活用した次世代のソフトウエア開発プラットフォーム「JijZept(ジェイアイジェイゼプト)」は、英国・米国・ドイツ・シンガポール・日本などで利用されており、エネルギーの需給計画や製造業の生産計画といった計画業務に対して、独自のアルゴリズムと最新のソフトウエア技術を組み合わせることで、効率的かつ高精度な開発ソリューションの実現を可能にします。

■QunaSysについて

QunaSys(キュナシス)は、量子コンピューターを活用したアルゴリズムとソフトウエアを研究・開発する企業です。特に量子化学計算において画期的な成果を上げており、CAE(Computer-Aided Engineering)向けのアルゴリズム開発にも取り組んでいます。また、量子コンピューターの開発環境「QURI SDK」を提供し、誰でも容易に量子アルゴリズムを実装できるようにするほか、エミュレーターやリソース推定技術を活用して量子計算の研究を支援しています。

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