~ネットワーク品質向上と運用DX推進に向け、25年度から一部機能を商用実装~
KDDI株式会社
株式会社KDDI総合研究所
KDDIとKDDI総合研究所は2025年2月12日、AIとの対話から運用者の要求に応じたネットワークを構築・設定・管理するシステム(以下 本システム)を開発し、検証環境での商用ユースケースの実証(以下 本実証)に成功しました。
本システムは運用者とAIとの自然言語での対話から、ネットワーク制御システムが理解可能なデータ記述言語(以下 Network Intent)を自動生成する技術と、Network Intentから自律的にトラフィックを制御する技術で構成されています。これにより、これまでは熟練の運用者の知見に基づき行っていたイベント対策などの作業負荷軽減や、ヒューマンエラーの回避が実現され、スキルの乏しい運用者でもネットワークの設定変更などが可能になります。まずは、Network Intentに基づき自律的にトラフィックを制御する技術から、2025年度の商用実装を目指します。
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両社は今後も、自律型ネットワークの実現に向け、AIを活用しネットワーク品質の維持・向上と運用業務のDX推進に向けた取り組みを継続し、お客さまが安心して使えるサービスを提供していきます。
なお、2025年3月3日から3月6日までの間、スペインで開催される世界最大のモバイル関連展示会「MWC Barcelona 2025」において本実証のデモを実施します。詳細はこちら。
■背景
あらゆるモノが通信とつながる時代、社会インフラとしてネットワークは必要不可欠なものとなり、高い品質を維持することが求められています。KDDIはネットワークの品質を維持するため、「スマートオペレーションプロジェクト」として監視業務の自動化を進めており(注1)、2024年にはLTEのモバイルネットワークにおいて、AIを活用した障害検知システムの運用を開始しています(
注2)。
一方で、ネットワークの構築や保守に必要な知見の多くは、長年の経験や熟練した技術のある運用者に依存しているのが現状です。また、ネットワークの複雑化や多くの人が集まるイベント対策の増加に伴い、各ネットワーク機器に個別の設定を投入するなどの人手での対応には限界も見えてきています。
こうした状況に対応するため、両社は機器の設定や運用ポリシーが最適化されたネットワークを自律的に構築・設定・管理する方法として、AI活用の検討を進めてきました。
■開発した技術
1. 運用者の自然言語からNetwork Intentを自動生成する技術
運用者からの要求をネットワーク制御システムへ正確に伝えるためには、YAML(注3)などの記述言語で作成する必要があり、ミスなく制御文を作成するには専門的な技術が求められます。そこでKDDI総合研究所は、AIと運用者が自然言語を使って対話し、自動的にネットワーク制御システムが理解可能なNetwork Intentを生成する技術を開発しました。
この技術には、運用者の記述からNetwork Intentを作成するための必要情報が得られない場合、AIが運用者へ必要な情報を質問する対話機能があります。例えば「アプリケーションが利用する帯域幅」などの専門的な質問ではなく、「想定するアプリケーション種別は何か」など運用者に分かりやすい質問を行い、Network Intentを作成していきます。
これにより、運用者が回答しやすくなるだけでなく、ネットワークの構築・設定・管理に必要な情報の洩れや数値の入力ミスなどを防ぐことができます。
2. Network Intentに基づき自律的にネットワークを制御する技術
現状のネットワークにおいても、部分的な自動化は進んでいますが、高度化・複雑化により、単純な自動化ではメンテナンス負荷が増加するなどの課題があります。そこでKDDIはNetwork Intentに基づくネットワークの実現に必要な、各機器の具体的な設定項目・設定値をKubernetes(注4)上のコントローラーが自律的に判断し、ネットワーク全体を制御する技術を開発しました。
これにより、ネットワークの制御において運用者の介在が不要となり、個人のノウハウや能力に依存することがなくなるとともに、手動での設定作業に伴うエラーのリスクを大幅に削減可能です。また、迅速かつ効率的なネットワーク管理が可能となります。
■本実証の成果
両社は本システムを使い、「花火大会に向けたネットワークの増強」「トラフィックの偏りを改善」といった運用者の要求を満たすネットワークを、自律的に設定・管理する実証に成功しました。また、これにより運用者の負荷が軽減されるとともに、自律的な運用によるヒューマンエラーの回避が可能であることを確認しました。
例えば、花火大会などの大規模なイベント対策について、AIとの対話の自然言語のやり取りで想定されるトラフィック量など詳細化し、ネットワークへの要求が記載されたNetwork Intentを作成します。これを、Kubernetes上のコントローラーがネットワークへの要求を満たすように各機器への設定内容に変換することで、ネットワークの設定変更まで行うことが可能になり、運用者の作業負荷軽減やヒューマンエラーの回避が実現されます。
- 注1)
- 注2)
- 注3)YAMLは、構造化データやオブジェクトを文字列で表現するためのデータ形式です。
- 注4)Kubernetesは、複数のコンピューター上でアプリケーションを自動的に管理するためのソフトウエア。Custom Resource機能を利用することで、特定のビジネスニーズに応じた拡張性のあるリソースを定義し、管理することが可能になります。
- ※この記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。
商品・サービスの料金、サービス内容・仕様、お問い合わせ先などの情報は予告なしに変更されることがありますので、あらかじめご了承ください。
ダウンロード
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