~「Satellite Mobile Link」で緊急通報や遠隔操作が可能に、建設の2024年問題解決に寄与~
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
清水建設株式会社
KDDI株式会社
独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構(本社:神奈川県横浜市、理事長:藤田 耕三、以下 鉄道・運輸機構)と清水建設株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:井上 和幸、以下 清水建設)、KDDI株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長 CEO:髙橋 誠、以下 KDDI)は2024年7月25日、清水建設が建設中の北海道新幹線 渡島トンネル(上二股工区、発注者:鉄道・運輸機構、以下 渡島トンネル)にてStarlinkを活用したauの通信エリア構築ソリューション「Satellite Mobile Link」をトンネル坑内で活用し、4G LTEの通信エリア化を実現しました。
なお、「Satellite Mobile Link」でトンネル坑内の工事現場に通信環境を構築した事例は、国内初(注1)となります。
3者は2022年12月に、「Satellite Mobile Link」で渡島トンネル坑外の工事現場の通信エリア化を行い(注2)、労務・安全管理や情報伝達の効率化・即時性を実現しました。一方で、工事現場の最前線であるトンネル坑内のセルラー通信のエリア化ができておらず、特に重大事故の発生リスクが高い切羽(トンネル掘削の最先端箇所)で外部への緊急連絡がすぐにできないことや、切羽掘削面の確認を坑外と行うために、移動環境が悪い工事中の坑内を往復する必要があるなどの課題がありました。そのため、さらなる効率化・即時性実現のため、3者で検討を続けてきました。
今回、先行してトンネル坑外の通信エリア化に使用した設備から、光ケーブルにて4G LTEのアンテナをトンネル坑内に延伸し、通信環境を構築しました。「Satellite Mobile Link」によるトンネル坑内対策は、Wi-Fiによるエリア化と比較し、設置機器数が非常に少なく、設置コストを1/3程度に抑えられることや、保守メンテナンス性が高いことが評価され、このたび、本格導入に至りました。
また、労務管理の効率化や施工管理・検査のDX化推進により労働時間の削減につなげることで、建設業の2024年問題の解決にも寄与します。
■背景
これまでトンネル坑内の通信環境はWi-Fi機器で構築されていましたが、大型の工事機械による遮蔽影響で通信エリアが数十メートル程度と狭いことや、長いトンネル坑内全体をカバーしようとすると、必要な機器数が多くなり、設置・メンテナンス作業が煩雑になるといった課題がありました。また、掘削作業での発破による影響を避けるため、アンテナ設備などの設置場所には制限があり、切羽から200メートルの範囲には通信環境を構築することができませんでした。そのため、機器を扱う現場からの緊急連絡や労務管理の効率化やDX化などに課題がありました。
■実施内容
「Satellite Mobile Link」の採用により、最小限の設備で約4キロメートルの範囲に通信環境を構築し、切羽付近も含めたトンネル坑内で緊急通報を含めた音声通話や、データ通信が可能となりました。これにより、地山変状などの緊急対応時の関係者との迅速な連絡や、電子図面の活用による効率的で高度な施工管理、高解像度の映像伝送による施工立会の遠隔臨場などICT活用を飛躍的に進めることが可能となりました。また、発注者による効率的な監督業務も実現しています。今後は、建設機械の遠隔操作など、建設現場のさらなるDX化が期待されています。
清水建設とKDDIは、今後も多様な事業者と協力し、未来を切り拓く現場に通信環境を整備することで、建設・土木分野におけるさらなる技術の発展を目指して、研究開発、実証を進めていきます。
また、鉄道・運輸機構は、建設現場での新技術の導入などにより、多様な事業者におけるさらなる技術の発展を後押しし、持続可能な社会の実現に向けて建設DXを推進していきます。
(参考)
■鉄道・運輸機構について
鉄道・運輸機構は、現場で実施する監督検査業務の更なる高度化を目的として、2024年4月に発表した「建設DXビジョンロードマップ」(注3)において、「監督検査関係のロードマップ」内で、2024年度から工事の監督検査における「携帯不感地帯対策の検討・技術開発」を設定し、取組みを進めています。
■清水建設について
清水建設は、ICT・BIM/CIMをベースとしたサイバーフィジカルシステムによるデジタル土木施工を掲げています。その中のひとつに次世代のトンネル構築システム「シミズ・スマート・トンネル」(注4)があります。「シミズ・スマート・トンネル」は、[1] ロボット施工生産システム、[2] 山岳高度施工管理システム、[3] 安全支援自動警報システムの三要素技術から構成され、ユニットそれぞれから自動取得されるデジタル情報の連携基盤を介して、高効率な施工管理や発注監督者との共有、類似課題の迅速対応(将来AIバックアップ支援を含む)など、施工段階から供用後の維持管理段階につながる高付加価値インフラの提供を目指しています。
■KDDIについて
KDDIは、「Starlink」や「Satellite Mobile Link」を建設、土木やエネルギーなど、さまざまな大規模インフラを構築・運営する企業のみなさまへの導入を進めています。高速通信がつながり続ける環境を提供することで、通信不感知で作業されるみなさまのDXを支援し、安心安全の確保・業務の自動化/省人化を実現し、事業課題の解決を目指します。
■Satellite Mobile Linkについて
KDDIが提供する「Satellite Mobile Link」は、衛星ブロードバンド「Starlink」をバックホール回線として利用したau通信エリア構築ソリューションです。通信不感地の現場に設置することで、携帯電話による音声通話やデータ通信の利用が可能となり、建設現場と事務所、本支店間の情報伝達の効率や即時性が向上します。また、通信環境整備により、スマートドローンやロボットを活用した遠隔でのインフラ点検やメンテナンスなども実現できるようになります。
- 注1)トンネル内でStarlinkを活用しセルラーネットワークを構築した事例として。2024年7月25日時点。KDDI調べ。
- 注2)
- 注3)
- 注4)
- ※この記事に記載された情報は、掲載日時点のものです。
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