国立研究開発法人水産研究・教育機構
株式会社オーシャンアイズ
KDDI株式会社
- Starlink MARITIMEを利用した小型いか釣漁船による洋上海洋観測体制を構築。
- 漁船観測データで高度化した海洋環境予測モデルの活用で操業の効率化に貢献。
近年、様々な種類の漁船漁業において、漁業の効率化や持続的な漁業生産活動の実現を目指し、先端技術を活用したスマート化の動きが盛んになっています。ただし、漁船の通信環境によっては、通信エリアや通信容量に大きな制約があり、このことがスマート化推進における課題でした。このような中、KDDIが提供する衛星ブロードバンド通信である「Starlink MARITIME」の利用可能エリアが本年2月から領海外にまで拡大したことで、沿岸から遠洋で操業する多くの漁船での利用可能性が高まり、その高速通信を活用した漁業のスマート化への応用範囲の拡大が期待されています。
国立研究開発法人水産研究・教育機構とKDDI株式会社の共同研究では、「Starlink MARITIME」を小型いか釣漁船に搭載し、漁船という特殊な環境下でも高速ブロードバンド通信が実現することを確認し、導入効果の検証を進めています。同じく、国立研究開発法人水産研究・教育機構と株式会社オーシャンアイズが実施する共同研究では、漁船の操業活動で得られる豊富な水温・塩分データなどを用いることで、漁場を知る上で非常に重要な海洋シミュレーション技術の高度化を図り、海洋環境予測モデルの精度向上をもたらすことを検証しています。
2つの共同研究による取り組みは、漁船漁業のスマート化を目指す中で同じ将来像を見据えたものであり、融合した取り組みを行うことで相乗効果が期待できます(付図参照)。現在は、三者連携の取り組みとして、「Starlink MARITIME」による高速通信の利用で株式会社オーシャンアイズが提供する漁業者支援サービス(海洋環境可視化ツール)である「漁場ナビPro」を、沿岸から約37km離れた小型いか釣漁船内でスムーズに使用可能であることを確認しました。今後は、小型いか釣漁船で観測した水温などのデータを「Starlink MARITIME」を用いて迅速に海洋環境予測モデルに反映し、その結果を素早く漁船漁業の操業に活用します。将来的には、この取り組みは漁場形成予測の高度化に繋がり、漁場探索時間の短縮化による燃油消費量・CO2排出量の削減などをもたらすことで、持続的な漁業生産活動に貢献するものと考えられます。
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