NEXCO中日本と自動運転車の安全な運転を実現する路車協調技術の実証に成功

自動運転車は道路上の白線を基準として走行することを前提に、技術開発が進められています。白線のかすれなどの路面異常は、予期せぬ停止や減速、車線の逸脱など事故につながる危険性があり、路面異常の検知や管制、後続車両への通知は自動運転の普及にあたり重要な課題となっています。
白線の視認性が低く自動運転を継続できない場合の対策として、事故防止の観点から停止や減速をせずスムーズに手動運転に切り替える技術の実装が期待されています。また、国内の高速道路の約16％（注2）がトンネルであり、GPSが利用できないトンネル区間においても、路面異常の位置特定を可能にする技術の開発が求められています。

車両が撮影した路面状況を基に、路面異常の情報と自動運転から手動運転への切り替えを促す通知を後続車両へ行うことに成功しました。
撮影された路面状態の映像は、KDDIのセルラー通信を使用してクラウド上の管制システムにアップロードされます。管制システムが白線のかすれなどの路面異常をAI画像分析により検知し、自動運転車の通行に支障を及ぼす可能性のある区間情報を運用監視者へ提供します。運用監視者はセルラー通信を通じて、付近を走行する後続車両への路面異常の情報提供と手動運転への切り替えを促す通知を行います。これにより、低コストかつ広範囲での自動運転システムの運用が可能になります。
また、BLEビーコン（注3）の使用により、GPSが利用できないトンネル区間における路面異常の位置特定を実現しました。
今後は、道路インフラ設備の監視・点検業務への応用も目指します。

なお、本実証はNEXCO中日本による「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」のユースケース3（車載センサなどを活用した維持管理情報や運行支援情報などの収集・提供）に該当します。

自動運転車の安全な走行の社会実装にあたり、遠隔監視に必要な通信要件の策定が課題となっています。特に遠隔で車両の退避を行う際には、伝送遅延により実際の車両位置と遠隔監視画面上での車両位置に差異が生じる場合があり、操作性の向上が課題となります。

自動運転車が緊急停止した際の、遠隔操作による車両の退避やスムーズな自動運転への復帰を行う実証実験を通じて、スループットなど通信要件の見極めに成功しました。遠隔監視よりも厳しい要件が求められる遠隔操作の実証に取り組むことにより、遠隔監視の社会実装に向けて大きく前進することになります。
また、遠隔監視時の伝送遅延や映像信号処理遅延による操作性の低下に対処するため、実際の車両位置と遠隔監視システム上の車載カメラ映像との遅延を可視化する「遅延の見える化機能」を搭載しました。遠隔監視システム上で算出した遅延情報と、車両から送信される車速・ハンドル角度の情報から、実際の車両位置を予測し遠隔監視画面上に疑似的に表示させることで、正確な遠隔操作が可能になります。
さらに、自動運転経路を遠隔監視画面上に表示し、車両の遠隔操作によって当該経路を目標に走行することで、自動運転への自動的な切り替え復帰が可能になりました。

なお、本実証はNEXCO中日本による「高速道路の自動運転時代に向けた路車協調実証実験」のユースケース4（コネクテッド車の緊急停止時における遠隔監視、操作）に該当します。